MURABOSHI’s blog

星空サークル ”むらぼしの会” (東京都国分寺市) のブログです。

☆むらぼしの便り☆(No.11)・・・星の年齢の測り方

M:「この間は、星の寿命がどうやって決まるかを聞いたね。
重たい星ほど速く燃料切れになるなんて、びっくりしたよ!」

H:「うんうん、そんな話をしたね。
それで今日は、たとえば「この星の年齢は100億歳」とか言うけれど、
その年齢を実際にどうやって測っているのか、という話をしようと思う。
少々専門的な話にもなるけれど、がんばってついてきてくれたら嬉しいな。」

M:「専門的、というと、どんな?」

H:「こちらの「HR図」という図を使うよ。」

HR図(模式図)(『活きている銀河たち』(富田晃彦著)より引用)

ヒアデス星団についてプロット。こちらは正確には「色等級図」という。(『活きている銀河たち』(富田晃彦著)より引用)

M:「へぇ、、エイチ・アール図。。
HとかRって何の意味があるの?」

H:「正式名称は「ヘルツシュプルング・ラッセル図」というよ。
この図を提案した2人の天文学者の名前が付けられているんだ。」

M:「ふむふむ。。
それで、この図から何をどうやって読み取ればいいの?」

H:「まず、この図の横軸は星の表面温度を表しているんだ。
左のほうに行くほど温度が高くて青白い星、右のほうに行くほど温度が低くて赤っぽい星になるよ。」

M:「そうなんだね! じゃあ、縦軸は?」

H:「縦軸は星の明るさを表しているよ。上のほうに行くほど明るい星になるんだ。」

M:「ふむふむ。。」

H:「そして、たとえば1つの球状星団などの星の集団について、この図にプロットしていくんだ。
1つの点が1つの星を表しているよ。」

M:「なるほど、やっとこの図の仕組みとみかたが解かってきたよ。」

H:「大切なのはまだまだこれからだよ。
沢山の星をプロットしていくと、大半の星が左上から右下の帯状の部分に並ぶんだ。
この部分にいる星たちのことを「主系列星」というんだ。」

M:「なるほど、そうなんだね!
じゃあ、この帯から外れて図の右上のほうにある星たちは何なの?」

H:「この部分の星たちは「赤色巨星(せきしょくきょせい)」とか「赤色超巨星(せきしょくちょうきょせい)」と呼ばれているよ。
星はその生涯の大半を主系列星として過ごすんだけど、寿命が尽きてくると、大きく膨らんで赤色巨星や赤色超巨星になるんだ。」

M:「ふむふむ。。
つまりは、寿命が尽きてくると、図のうえでは帯状の主系列部分から右上の赤色巨星などのエリアに移るっていうことだね。」

H:「その通りだよ。
それで、もう1つのポイントは、主系列の帯の上では、左上の方ほど重くて明るい星、右下の方ほど軽くてそれほど明るくない星になってる、っていう点なんだ。」

M:「そうなんだね!
ということは、このあいだ聞いた話を考え合わせると、左上の方ほど寿命が短くて、右上の方ほど寿命が長い星だとも言えるね!」

H:「そう、良い点に気が付いたね。
それで、次のHR図を見てほしいんだ。何か分かることがあるかな?」

球状星団NGC188についてプロット。(『活きている銀河たち』(富田晃彦著)より引用)

M:「あっ、主系列の帯が途中で折れ曲がって、赤色巨星のエリアに向かってる!」

H:「そうなんだ。
長かったけれど、この辺でそろそろ今日の話のオチが着くよ。
球状星団などの星の集団は、同じ時期に一斉に生まれたと考えられるよね?
集団の中には重い星から軽い星まで様ざま居るけれど、重い星から順番に寿命を迎えていくわけだ。」

M:「なるほど! 主系列の帯が折れ曲がっている場所に居る星はまさに寿命を迎えようとしている星になるわけで、
その星の推定寿命がつまりは球状星団の年齢と同じっていうことだね!」

H:「ご名答!
今日の話は少し長かったけれど、ぶじ答えに辿り着くことができた。」

M:「こんなカラクリで星の年齢を調べることが出来るなんて、なんだか得した気分だし、これから天体観測するときの観かたが変わってくるような気がするよ。」

☆むらぼしの便り☆(No.10)・・・星の寿命はどうやって決まるの?

M:「先週は年老いた星々の話を聴かせてくれたけど、ひとつ質問してもいい?
どうしてそういう長生きできる星々が居るのかな?」

H:「なるほど、星にとっての「長生きの秘訣は?」みたいな質問だね。
星の寿命が尽きるというのはつまり、星が自分自身を光らせているための燃料が切れるということを意味しているよ。
ところで、星には重い星から軽い星まで様々な重さがあるんだ。
星の寿命の長さは、重さによってほぼ決まってしまうんだよ。」

M:「なるほど、わかった! 重たい星ほど燃料を沢山持っているから、長生きするということだね!?」

H:「そう思いたくなるでしょ? 実はまったく逆で、重い星ほど短命で、軽い星ほど長生きなんだよ。」

M:「ええっ! そうなの!?
それはまた、どうして??」

H:「星は、水素やヘリウムを燃料に、星の光としてエネルギーを放出している。
星の内部で起きているこのエネルギー転換のことを“核融合反応”というよ。
重たい星ほど自分自身の重力で中心に向かって押し縮める圧力が高いから、核融合反応も速く進むよ。
それで、確かに重い星ほど沢山の燃料を持っているんだけど、燃料を消費するスピードが速いからかえって早く燃料切れになってしまう、っていう訳なんだ。」

M:「なあるほど! 目からウロコが落ちたよ!」

H:「ちなみに、太陽の寿命は100億年程度と考えられているのに対して、
太陽の2倍重いシリウスの寿命は18億年、太陽の20倍重いベテルギウスの寿命はわずか1000万年と見積もられている。
逆に太陽の半分の重さの星だと寿命は800億年もの長さになる計算だよ。」

M:「ふむふむ。先週聞いた、天の川銀河のハローにいる球状星団の星々やその他のハロー星は年齢が100億年を超えているということは、みんな太陽よりも軽い星たちということだね。」

H:「そういうことだね。」

M:「ところで、実際の星々がいま何歳なのか、って観測からどうやって判るのかな?」

H:「それじゃあ、次はその辺の話をじっくり話してみたいな。」

春の星座ヘルクレス座にある、球状星団M13

 

☆むらぼしの便り☆(No.9)・・・天の川銀河のカタチ

M:「このあいだ聴かせてくれた天の川銀河の話は改めてスケールの大きさに驚いたよ。
端から端まで10万光年ってすごいね。」

H:「そうそう、直径について話したところで終わったんだったね。
天の川銀河は渦巻銀河だよね。
太陽系は天の川銀河の中心から約2万6千光年離れたところに位置している訳だけど、
中心のまわりをほぼ円軌道を描いて運動していて、約2億年かけて1周しているよ。」

M:「2億年! 10万年よりも更に時間スケールが大きな話だ!
2億年前、太陽系が1周前の位置にいた時には地球上では恐竜が闊歩していたってことだね!」

H:「そして、中心部分の星が密集して少し膨らんでいる部分を”バルジ”というよ。
さらには、天の川銀河にはバルジとか円盤だけじゃない構造もあるよ。」

M:「というと!?」

H:「バルジや円盤を取り巻くように、ほぼ球形の領域にもまばらなんだけど星々が存在していて、”銀河系ハロー”と呼ばれているよ。」

天の川銀河の構造。円盤部分やバルジのまわりをハローが取り巻いている。『活きている銀河たち』(富田晃彦著)より引用。

M:「そうなんだ! 天の川を造っている円盤部分だけだと思ってたけれど、それだけじゃないんだね!」

H:「円盤部分にはたとえば”すばる”(”プレアデス星団”)に代表されるような”散開星団”があったりして、そこでは新しい星々が誕生しているけれど、
ハローには星の誕生は見られない。年老いた星々で構成されているよ。」

M:「年老いた、というと年齢はどれ位?」

H:「ざっと100億年を超える星たちがあるよ。中には130億歳ぐらいの星も。。
10万個程度の星々が集まっている”球状星団”も主にはハローの領域にあるんだけど、やはり100億歳を超える年老いた星々で造られているよ。」

M:「へぇ、すごいな!
宇宙そのものの年齢が138億年だと見積もられていると聞いたことがあるけれど、
これに近いような年齢の星たちがいるってことだ!」

H:「ハローの星たちにどんな物質がどれぐらい含まれているかとか、どんな軌道で天の川銀河の中心の周りを運動しているかとか、詳しく調べることで、天の川銀河の歴史を解き明かそうという試みもされているよ。」

M:「星を調べることで昔の宇宙のこともふくめて色んなことが解かるんだね!
興味は尽きないね。」

☆むらぼしの便り☆(No.8)・・・天の川銀河の名前の由来

M:「桜も満開になってもうすっかり春だね。」

H:「そうだね、夜に星空を観察する時ももう寒くはないよね。」

M:「この間は子持ちシシャモ、じゃなかった、、子持ち銀河の話を聞いたから、もっと銀河のことを知りたいんだ。」

H:「お、そうなんだ、興味あるんだね!
そうしたら、今日は天の川銀河の話しをしようかな。」

M:「天の川銀河、つまりは我々人類が所属している銀河だね。
わくわくする!」

H:「そう。天の川は英語ではMilky Wayミルキーウェイ)。
そして、我々の天の川銀河に限らず銀河「一般」はgalaxy(ギャラクシー)という。」

M:「ふむふむ。これは聞いたことがある。天に乳が流れたような跡があるから、Milky Wayミルキーウェイ)、なんだよね。」

H:「うんうん。しかし、galaxy(ギャラクシー)という言葉も元はラテン語でミルクを意味するgalaxias(ギャラクシアス)から来ているんだよ。」

M:「えっ、そうだったんだ!?
銀河「一般」を指す名前も、元々は天の川銀河に由来しているってことだね!」

H:「因みに、Milky Wayミルキーウェイ)の名前のほか、The Galaxy(ザ・ギャラクシー)と定冠詞を付けても天の川銀河の意味になるよ。
日本語では天の川銀河は「銀河系」とも呼ぶよ。」

M:「なんだかややこしいけれど、、まあ解かったよ。」

H:「ところで、天の川銀河は円盤銀河だよね。直径はどれ位あると思う?」

M:「うーん、見当も付かないなあ。。」

H:「天の川銀河の直径はざっと10万光年。
ただ、目で見える物質が分布している範囲だけでこの直径で、目に見えない物質も含めるともっと大きいと言われているよ。」

M:「10万光年、つまり、天の川銀河の端から端まで光の速さで走っても10万年もかかるってことだね。。10万年前というと地球上では旧石器時代だね。途方もない大きさだね。」

H:「そう。そして、19世紀ごろまでは天文学者も太陽系が天の川銀河のほぼ中心にあると考えたりしていたけれど、現在では太陽系は天の川銀河の中心から約2万6千光年離れた場所に位置しているということが解かっているよ。」

M:「なるほど。人類の宇宙観もだんだんと変わってきているんだね。
そして、我々が天の川銀河の中心から離れた場所に居るからこそ、中心部分を観測することも出来る訳だね。」

H:「うんうん、そうだね。
今日は少し長くなったから、続きはまた改めてお話しするよ。」

武蔵国分寺公園から観た天の川

 

☆むらぼしの便り☆(No.7)・・・彗星はどうして尾を引くの?

M:「ポン・ブルックス彗星、もうかなり明るくなってきているみたいだね。」

H:「うんうん、2等星ぐらいの明るさに増光しているよ。
観てみたいよね!」

M:「ところで、彗星ってどうして尾を引いてるのかな?」

H:「ひとことで言えば、彗星の本体から蒸発した物質が太陽風などに吹き流されて尾を引いているんだ。」

M:「なるほど。なんとなく解かった気がする!
彗星が太陽に近づくと彗星の本体が太陽の熱を受けて蒸発を始めるんだね。」

H:「そう、その通りだよ。
彗星の本体のことをコマと呼んでいるよ。コマというのはラテン語で”髪の毛”という意味。
このコマはよく”汚れた雪玉”に例えられることがあるよ。
水の氷のほか、一酸化炭素二酸化炭素、メタン、アンモニア、シアン化水素などの氷とともに、様々な塵が混ざってできているよ。」

M:「その氷が融けだしてガスになったり、塵が飛び出してきて彗星の尾になる訳だね。」

H:「彗星の尾には2種類あるよ。
まずはダスト・テイルというもの。
ダストは塵(チリ)、テイルは尾のことだよね。文字通り塵でできている。
もう一つはイオン・テイル。イオン化されたガスでできているよ。」

彗星の模式図(国立天文台ホームページより引用)

M:「で、さっき言ってた、太陽風などに吹き流されて尾を引く、ってどういう事なの?」

H:「太陽風というのは、太陽が宇宙空間に撒き散らしている、電気を帯びた粒子の流れのこと。
イオン化されたガスは太陽風に吹き流されて、太陽とは反対方向に延びるイオン・テイルになるよ。
それから、太陽の光にも「輻射圧」という圧力があって、塵も太陽とは反対方向に延びるダスト・テイルになるんだ。」

M:「そうなんだ!
彗星の尾というのは進行方向の後ろに延びているものだとばかり思ってたけれど、
実際には太陽の反対方向にたなびいてるって訳なんだね!」

H:「彗星のコマについては近年、探査機が近くまで行って観測したり、物質のサンプルを地球に持ち帰るということが行なわれているよ。」

M:「それはすごい。だんだんと彗星の正体が解明されているんだね!」

ジオット探査機がハレー彗星のコマを至近距離から撮影。コマからガスなどが吹き出している。(ESAホームページより引用)

 

☆むらぼしの便り☆(No.6)・・・ポン・ブルックス彗星接近中!

H:「おはよう。」

M:「やあ、おはよう。
だいぶ日が長くなってきて、日の入りの時間も遅くなってきたね。」

H:「本当、月日が経つのははやいね。」

M:「確か、1月には今年1年に観られる天文現象について話してたけれど、4月にポン・ブルックス彗星が地球に接近するんだったよね。」

H:「そうだよ。ポン・ブルックス彗星、もう見え始めているよ。」

M:「おおっ、そうなんだ!」

H:「日没後、夜の7時ごろ西北西の低い空にいて、今はうお座の中に見える。
地球に近づいてきてるからね、増光してきて肉眼で見える6等級は超えたけれど、
街中で観るには双眼鏡が必要だよ。
こんど一緒に双眼鏡で観てみよう。」

M:「いいね!ぜひぜひ!」

H:「これから更に増光して双眼鏡がなくても肉眼で観られるようになる可能性もあるよ。」

M:「そうなんだね。
再接近する4月にも期待大だね!」

H:「”ほうき星”だからね、立派な尾が観られたらいいね。」

☆むらぼしの便り☆(No.5)・・・プラネタリウム100年

M:「おはよう。」

H:「やあ、おはよう。
そういえばさ、この間プラネタリウムに行ってきたよ。
なかなか見応えのあるプログラムだったよ。」

M:「プラネタリウムに行ったんだ!?
それなら僕もさそってくれたら良かったのに〜〜!
あまり行ったことないし、さいごに行ったのはもう10何年も前だから、なおさら声かけられたら行きたかったよ。」

H:「ごめんごめん。
僕も久しぶりにプラネタリウムに行きたくなったのは、いまプラネタリウム100周年のお祝いをしている期間だからなんだ。」

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M:「えっ、100周年!?
プラネタリウムってそんなに昔からあったんだ!?」

H:「そうだよ。
プラネタリウムはドイツのカール・ツァイス社が製作したものが 1923年10月21日、ドイツ博物館で関係者向けに投影されたのが最初だよ。」

M:「そっか、もう101年目に入ってるんだね。」

H:「初投影からはね。
ただ、その後ドイツ博物館に常設されることになったのが2年後の1925年5月7日のことだよ。
だから、国際プラネタリウム協会IPA)は2023年から2025年の3年間で100周年の記念事業を行なうことにしているよ。」

M:「なるほどそういうことか。いま世界的にお祝いしてる期間なんだね!
ところで、日本で最初にプラネタリウムが上映されたのはいつだったのかな?」

H:「日本では1937年(昭和12年)3月13日に『大阪市立電気科学館』が開館したのが最初だよ。」

M:「そうなんや! 大阪が最初やったんや〜!
で、東京で最初のプラネタリウムは?」

H:「東京では1938年10月30日に有楽町に開館した『東日天文館』が最初だよ。
だけど、ここは1945年に空襲で焼けてしまった。」

M:「子どもも大人も目を輝かせて観ていたプラネタリウムが戦争で焼けてしまったのか。。
こんなに悲しいことは無いね。
そういえば、100年前のドイツもナチズムが吹き荒れる前夜だね。
戦争もくぐり抜けてきた100年だった訳だ。」

H:「プラネタリウムも平和であって初めて心から楽しめるものだよね。」

M:「本当にそうだね。」

H:「こんどもう一度プラネタリウムに行きたいな。」

M:「おっ、いいね! 行こう行こう!」

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